安心材料

 正月はどうされるのとこの時期は良く尋ねられる。何もする事がないから家にいると答えるとすこぶる好感を持って迎えられる。助かったと言葉を続ける人もいる。こんな僕でもいるだけで少しは安心材料になるのだろうか。何があっても病院にかかる人達にとってはまか不思議な会話かもしれないが、病院嫌いもいるし、面倒くさがり屋もいるし、漢方ファンもいるから、いつでも電話すれば薬局が開く状態は彼らには好ましいのだろう。  本当にすることがないのだ。興味がわかないと言った方があたっているかもしれない。行きたいところがあるわけではなく、会いたい人がいるわけでもない。だからといって、休養をとらなければならないほど疲れてもいないから、ダラダラ休むのも性にあわない。何かをしなければ時間が経たない。そう思って今やるべき事を紙切れに書いてみた。意外や意外結構項目が並んだ。どれも薬局の日常業務の範囲内のものだ。平生如何にその種のものを避けて暮らしているかが良く分かる。苦手なものだから、どうしても後に回してしまう。その上、読めていない情報誌がゆうに30cmの高さに積み重なっている。これを如何に低くするかも連休中にかかっている。  恐らくテレビのスポーツ番組を観、飽いたら薬局に下りてきて、事務処理や読書をするという繰り返しになるだろう。テレビは、もうスポーツ番組くらいしか信用できないから、それ以外のものは観ないだろう。くだらない人間の標本が欲しかったらテレビのスイッチをつければいい。いくらでも標本が並んでいる。黙々と生きてきた人間をネタにぬくぬくと生きてきた人間がしたり顔をしている。  第九で歌い上げる人間賛歌は現代のこの国には似合わない。