寄り道

・・・無事受験も終わりほっとしています。思い起こせば、高校一年の時のお昼はお腹が心配でゼリー飲料、カロリーメイト等を教室の片隅で食し、二年になってやっとおにぎりを持って行き食べるようになり、そして今普通の子と同じように食堂でお弁当を食べることができるようになりました。おまけにパンなども買って食べたり、結構食べてます。(笑) おかげさまで大学も決まり、ありがとうございました。 追伸:来週よりスキーに行きます。・・・

 長い間のお付き合いだったが、この一瞬で全てが報われる。都会の高校生は大変だと、薬の注文の度に書き添えられる近況に、いつも感心していた。つかず離れず、恐らく程良い距離をこのお母さんは保っていたのだと思う。突き放しもせず、守りすぎもせずと言ったところだろう。いつも簡素なメールだったが、何となくそう感じた。過敏性腸症候群を治すにあたって、特に学生の場合は、親の理解と協力があるとないとでは雲泥の差が効果に現れる。不安や不満を聞いてくれ、少しだけ励ましてくれる親は心強いだろう。自尊心のかたまり、ナルシシズムの絶頂にある青春期に正しい判断が出来ないことは多い。その時にそっと手を差し伸べてくれる親の存在は大きい。間違っても、自分の成功体験や、価値観を押しつけてはいけない。自分のことを棚に上げて、道を説いてはいけない。道は外れなければ道ではない。はずれないなら線路でしかない。それも親が敷いた線路など面白くも何ともない。小さな道草も壮大な道草も、道だから出来る。目的地に向かってひたすら歩むのも立派な生き方だが、寄り道だらけの歩みもまた素晴らしい。芸術や文学は、いや恐らく科学までもが、道を逸れた時間にひらめいたもので成り立っているものが多いのではないか。  親子で喜んでいる姿を勝手に想像して目頭が熱くなった。嘗て自分が経験したことを重ねたからか、あるいは、救いの手が伸びず夢を諦めている若者の押し殺した悲鳴が聞こえてくるからか。田舎の小さな薬局にも、たまには南からの風が寄り道をする。