健康

 何年か前、お医者さんが書いた文章で「これからは、サプリメントの飲みすぎによる肝臓疾患が増える」と言う下りを読んだことがある。僕もそれは感じていた。幾種類ものサプリメントを、言われるままに、勧められるままに飲んでいる人が多い。効果を感じている人は逆にお目にかかったことはないが、よくもあれだけの異物を身体に入れて持つものだと人ごとながらに心配していた。口を挟むことは出来ないから、尋ねられたら、健康食品は畑に植えられ、海を泳いでいると答えることにしている。手を加えるごとに自然から段々遠ざかり、不健康食品になってしまう。当たり前の話だ。健康食品は、都会の店で、あるいは通販で買うものではなく、八百屋や魚屋さんで買うものなのだ。  今日来た女性なんか大したものだ。健康食品を6種類飲んでいたらしい。僕と同年輩で独身だから健康にはすこぶる神経質で、色々気を使っていたのだろう。その結果、3回、肝障害を起こしたらしい。さすがにそれ以降は止めたらしいが、そもそも食事には全く無頓着で、食事の不足分を補っていたつもりらしい。食べ物はビタミンやタンパク質の化学式で成り立っているのではない。植物も動物も、人間が勝手に分析した結果論では説明できない「命」を持っている。その命を頂いてこその健康食品なのだ。光沢鮮やかなカプセルやガラス瓶の中で命は育まれない。  便利の落とし穴は意外と深い。背丈ほどなら出られるが、時には深い穴もある。得るものより捨てるものが価値があるというしゃれにならないことも多々ある。健康はお金で買うものではなく、お金と縁遠くなれば手に入るもののような気もする。