ご祝儀

 色々な製薬会社から、毎月セールスの人が情報を持ってやってくる。もう数年同じ人が回ってくると情報をもらうと言うより、単なる世間話で終わることが多い。今日来たセールスの人も途中数年のブランクがあったが、僕がまだ30代の時からやってきている。取り立てて優秀だとも思えないが、何故か気が合う。色々な理由があるのだろうが数点拾い上げてみると・・・  まず、業界トップの会社ではない。だから就職するときも、トップの会社に蹴られたか最初から選択肢に入れなかったはずだ。僕は、規模の大小を問わず一番は嫌いだし、エリートとは肌が合わない。もっとも向こうはもっと合わないだろうが。第2は、サッカーをやっていたこと。それも大阪の名門高校で。そして大学で挫折したこと。社会人になってその面影もないくらい太っていること。当時僕もスポーツ少年団を立ち上げたばかりの頃で、何となく親近感を持った。第3は、相撲取りの魁皇に似ていること。魁皇は稽古場の横綱と言われて久しいが、結局は度重なる怪我と運の無さで万年大関に甘んじている。そんな不器用さが僕は好きだった。偶然彼にそっくりなのだ。最期は彼が関西人だと言うことだ。これが実は最大の原因かもしれない。  関西以外の人には分からないが、彼らは人といるとすぐにボケとつっこみにあうんの呼吸で別れる。大切な要件でもギャグにしてしまう。関東のセールスの人が全く冗談を言わずひたすら情報を提供して、こちらの機嫌を損ねないように気配りするのとは雲泥の差だ。どちらがより優秀かは分からないが、関東も関西も首にならずに又顔をのぞけてくれるから、僕の薬局に来る人達はそれなりに優秀なのだろう。 今日の彼の最高のギャグを一つ紹介。 彼が担当している薬局のお母さんが、孫のことでオレオレ詐欺にかかったらしい。それは気の毒な話なのだが、その事で、おばあさんがえらいお金を持っていたことに家族が気がついて、一悶着あったらしい。そのこと自体もさりありなんと面白かったが、「僕なんか、子供のために電話で金を何百万用意するように言われたら、分割にしてもらえへんやろかとお願いしないと払えませんわ」と笑いながら言った。何とも言えない間をおいてちゃんと落ちをつけるから彼らはやはりすごい。  まだ在庫はあったが、数点ご祝儀に注文してあげた。笑いに優る薬を僕は知らないから。