解放

マザーテレサの祈りの中に、「解放」と言うのがある。今日、使いさしの古いノートの間に挟んでいるのを偶然見つけた。もう黄色く変色し始めているから、かなり古いのか、あるいは日に焼けたのだろう。恐らく、子供達のノートを妻が使っていたのだろう。初めて見るお祈りだが、内容が僕自身にも、あるいは僕の薬を飲んでくれている人達にもとても示唆に富んでいるので紹介したい。   イエスよ、わたしを解放してください。愛されたいという思いから、評価されたいという思いから、重んじられたいという思いから、ほめられたいという思いから、好まれたいという思いから、相談されたいという思いから、認められたいと言う思いから、有名になりたいという思いから、侮辱されることへの恐れから、見下されることへの恐れから、非難される苦しみへの恐れから、中傷されることへの恐れから、忘れられることへの恐れから、誤解されることへの恐れから、からかわれることへの恐れから、疑われることへの恐れから。

 今日、日程の都合で時間が沢山余ったので、夕方2時間以上商店街で過ごした。そのほとんどをCDやDVDを売っているお店で過ごした。昔ならレコード店というのだが今はなんて呼ぶのか知らない。ただでジャズを一杯試聴させてもらったお礼でもないのだが、偶然ワゴンセールの中に、BB.Kingを見つけたのでそれを買った。980円の値段表が貼ってあった。昔のレコードよりも安いなんて考えられない。喜び勇んでレジに持っていくと、僕ら年配のスーツを着た人が、「変わったのを聴くんですね、1円引いておきます」と言った。一瞬何のことか分からなかった。いや、実は今でも分からない。まけてくれたのだから反射的にお礼を言ったのだが、冷静に今考えても1円と言う額の所以が分からない。金がない中年男性が、なけなしのお金で買ったと思われたのか、2時間近く居座ったのが目障りだったのか。   僕は意外とこんな経験が多い。むさ苦しくていやなのか、同情を引きやすいのか、どちらも相手は同じ行動をするので真意の程は分からない。今日見つけたマザーテレサの祈りは衝撃的だった。もしこの通りが実践できたら、なんてすばらしい人生になるだろうと容易に想像がつく。あんなに偉大な人でも、常に自分にうち勝てるようにお祈りしていたのかと思うと、何となく救われる。僕は青春の落とし穴に落ちて、それを克服するために自然と祈りの後半部分は身に付いた。前半の部分は年齢が少しずつ解決してくれていることに気がついている。1円で反射的にお礼を言った。10円だったら満面の笑みをたたえ、100円だったら深く頭を下げるだろう。色々な思いを捨てれば本当に心が軽くなる。自分が自分を許すことが出来るなら、他人の目なんかほとんど価値がない。脱ぎ捨ててこそ光る人格がある。僕の年齢を待たずに、早くこのことに気がついて。さもなければ、僕の、あなた方の青春の躓きが意味をもたない。みんなで解放を勝ち取ろう、自分からの解放。