情景

 つい最近、アレルギーのことで良く来るようになった親子がある。今日は初めて、お父さんも連れてきた。お父さんも自分のトラブルを漢方薬で改善したいと思ったみたいだ。お父さんがいなくても十分幸せそうな光景だったが、お父さんが加わって余計幸せ家族に見える。その事を奥さんに言うと、どうしてでしょうねと不思議がった。こちらも何の根拠もなく、伝わってくる雰囲気で言っているだけなので、何ででしょうと質問されても分からない。ただ、そう感じるだけなのだ。 その奥さんが、うちなんかどこにも出かけないんですよ。夏休みの旅行も行ったことがないんですと言った。笑顔で言っているから、その事が何かに劣るとも考えていないことはよく分かる。何らコンプレックスも感じてはいない。父親を含めた会話を聞いていると、愛情深いのがよく分かる。決して叱ると言うことはしない。ただ必要な場面では注意はするが。  どこにいようが、幼い子供が元気で遊んでいれば幸せだ。親の笑顔があれば申し分ない。愛情の深さをまさかお金では測れまい。多くの物を与えられても、多くの愛情には勝てない。愛情を注ぐにはお金はいらない。ただ、自分より大切なものと思うこと。成長するまで守ってあげなければならないと思うこと。成長したら、介入しないこと。  幼い子供を育てている頃の夫婦は充実している。責任感と喜びに溢れている。夫婦の連帯感もある。薬が出来るのを待っている間の情景に過ぎ去りしあの頃を思い出した。