防風通聖散

 「脂肪をとる」が売りの漢方薬がとてもよく売れているらしい。如何にもそれらしい名前を付けて、痩せ効果や、メタボ対策に有効なことを印象づけている。僕が帰ってきた頃から繰り返されていることで、メーカーの手段を選ばない商売にうんざりする。忘れた頃に又ぞろ復活するのが世の常なのだ。  利用されているのは防風通聖散で、脂肪をとる効果も痩せる効果もない。医薬品の許可を取るときにわかりやすいように申請した結果が何十年も残っているのだろう。それを利用する人がいて、それにだまされる人がいて、大切な資源が枯渇していく。本当にその処方が必要な人だけが飲めばいいのに、必要もない、適応以外の人が興味本位で買ってしまう。四川大地震による生薬の高騰がいずれ始まるだろう。中国人の賃金も上がってきた。これからは以前のような安い漢方材料は入ってこないだろう。材料が少なくなると値段が上がり、誰もが漢方薬を飲めなくなる。若い人で漢方薬を必要とする人も沢山いる。彼らが飲めなくなったら気の毒だ。  漢方薬に普遍性を持たせるのは難しい。同じ病名なら同じ薬を飲むなんてのはあり得ないのだ。こつこつと地味な努力で適した処方を捜していくのが漢方薬だ。大量消費を企てて、大切な資源を絶やさないで欲しい。売れればいいなら、どうぞ漢方の世界から手を引いて欲しい。石油から出来た大量に創れるものを、是非売って欲しい。  1人1人は善良に生きているのだろうが、企業という集団になるとどうしてこんなに勇猛になってしまうのだろう。些細なことにおびえている人達が、勇者に変身する。自分たちの非力を認めてもっと謙遜に振る舞えばいいのにと思えて仕方ない。