もみじまんじゅう

 昨日の日曜日、僕は東の娘は西の勉強会に出席した。家に帰ったのは二人とも夜だったが、娘は落胆していた。あるメーカーの勉強会に出席したのだが、期待はずれだったらしい。咳に関して製薬会社の学術部が説明するというふれ込みだったが、風邪を引いてすぐは、お医者さんにいって抗生物質を出してもらう、こじらせれば、何万円もする免疫を強くする自社製品を勧めると言うような内容だったらしい。さすがに娘は耐えられなくて、途中で帰ってきたらしい。もみじまんじゅうを数人分お土産として買って帰ったから、さぞかし高いもみじまんじゅうになっただろう。  そもそも薬局に風邪を引いて薬を取りに来る人は、少なくとも僕の薬局では、早く治したい、時間が無くて医者に行けない、強い薬を飲みたくない、自分で治したい、漢方薬が好きなどの理由だ。わざわざ来ている人に医者に行くように勧める理由はない。風邪くらいほとんど治すことは出来るし、そもそも治る病気だ。逆にこじれた人を待って、高価な免疫を強くする健康食品を売ったりするのは、薬局としてはあまり誉められたことではない。風邪を引いたときに対処できる処方を競うべきで、こじらせたときに不安につけ込むようなことをしてはいけない。それこそこじらせたら医者を紹介すべきで薬局の仕事ではない。  そんな講義に娘が嫌気をさして退席したのはよかった。販売を競うような知識は必要ない。田舎で知っている人ばかりを相手にする薬局に、カリスマは必要ない。娘が帰ろうとしたら、同じように会場を出て、同じように路面電車に乗り、同じように新幹線に乗った青年がいたらしい。青年薬剤師の純情を汚さないでほしい。