解放

 自分のためにだけ生きていける年月は、そんなに長くない。親の管理を離れる高校卒業あたりから、結婚あたりまでだろう。この間が、人生で唯一の解放区だろうか。そのわずかの間にいかに多くの破壊と、多くの創造を経験するかが、後の人生を決めると思うが、そこで立ち止まり、壊しもしない、創りもしない人達がいる。壊さなければ新しいものを受け止める容量が不足する。創らなければ生産的には生きていけない。用心は綿密とは似ていて非なるものだ。不器用は失敗の親ではない。しがらみから抜け出て、冷たい朝の空気を肺胞に一杯吸い込み、吐く息を寒空に白く吹き上げるべきだ。つかの間の自由も、つかの間の熱量も、輝いているだろう。それは解放されている時間のみが持つ魔力なのだ。今を否定しないで、明日を疑わないで。