停電

 どこで何があったのか分からないが、昨日、昼過ぎに突然停電した。風も吹いていないし、雨も小雨だった。午後の3時過ぎだったと思う。電気の使いすぎかと思いすぐブレーカーを点検したが落ちてはいなかった。それではたと気がついて外に出てみると、信号機が消えていた。それで我が家の問題ではなく少なくともこの界隈の停電だと知った。後から配達に行っていた妻が言うには、牛窓のかなり離れたところも停電だったから、牛窓に送られてくる線になにかが起こったのだろうことは分かった。  20分くらい停電していたように感じた。丁度遠くから漢方薬を取りに来てくれていた人がいて、待って貰うのが気の毒なあと思っていたら、気を遣って出ていってくれた。薄暗いなかで待つのもいやだろうし、他に牛窓に用事もあったみたいだ。  電気が消えれば薬が作れないのだ。レジもあけれないのだ。疲れた人にマッサージ機も使ってもらえないし、温かいお茶も出せない。パソコンを使えないからあらゆる事務が出来なくなる。血圧も測れないし暖房も止まる。要はほとんどの業務が出来なくなるのだ。電気の回復をひたすら待つだけで、何とも情けない。使えるのはおしゃべりな口くらいなもので、なんだかとても無能な人間に思えた。  スイッチを入れれば電気が瞬時にともり、蛇口をひねれば水がすぐに勢いよく飛び出す。便利は当たり前の中に隠れて萎縮しているが、それを失ったときにはすこぶる存在感を増す。遠く、地震ライフラインを破壊された土地のことを思う。わずか20分で感じた不便を何百倍すればあの方達の体験に迫れるのか分からない。目標を選ばない地球の反撃に備える術を知らないが、出来るなら二度と立ち上がれない人達を襲うことのないように祈るばかりだ。