欲望

 僕は、あなたが2週間分の薬を持って帰ったのに、2週間後に来ないから心配していました。ひょっとしたら、あなたの症状を何一つ改善してあげれなかったのではないかと罪悪感も感じていました。とても多くの症状で困っていた貴女の役に立てれなければ、僕の薬剤師の年月に意味がありません。だから、偶然数人立てこんで待ってもらった中に、あなたのあの素敵な笑顔を見つけた時はとても嬉しかったです。  会社に煎じ薬を持っていけれないから少し薬が長引いたことを知って、あなたが少し来るのが遅くなったことを知りました。でもあれだけ改善していたら、その飲み方でいいですね。辛い症状をいっぱい持っていても、あれだけ明るく振舞うあなたのけなげさの訳も分かりました。憂いを表わさずひたすら明るい笑顔を撒き散らすあなたに救われる人は多いと思います。あなたを治す立場の僕だって、実はあなたの笑顔にとても心を慰められるのです。貴女の今日の話でも、現代の親がいかに子供を苦しめているかよく分かります。あなたと同じような話はしばしば薬局の中で交わされる内容です。親が自分の欲望を優先させて、子供をいかに傷つけているでしょう。欲望のとりこになった親は子供に心を向けませんから、もので育ててしまいます。子供はぐれて道を外れるか自分を傷つけてしまうしか、親の愛情を取り戻すことは出来ないのです。実は子供を一番傷つけているのは親なのです。親を選べない子が哀れです。  家を出て、自由に暮らしたらいいと思います。いつまでも親と一緒にいるのは不自然です。どの動物が親といつまでも一緒に暮らすでしょう。大切だからこそ、親は子を野に放つのです。僕の漢方薬であなたをどのくらいまで元に戻してあげられるか分かりません。でも、僕はあなたを以前の姿のままの状態で野に放ちたいのです。そうすれば、あなたは本来備わっているとても素敵な笑顔でどれだけの人を心地よくしてくれるでしょう。それは、僕がコツコツと薬局で薬を作るよりきっと多くの人を幸せにしてくれると思うからです。あなたの笑顔が憂いを隠したものでなく、心の底から沸き出ずるものであって欲しいと思います。