ダンボール箱の中に器用に体を曲げ、我が家のクリは気持ち良さそうに眠っている。僕の視線を感じるのか、時々目を開けてこちらを見るが、又すぐに目をつむり眠り始める。  命あると言うことは、呼吸と共に体がかすかに揺れることか。触れば温かいことか。大きなあくびをすることか、箱から出て、大きく背中を伸ばすことか。死ぬと言うことはどう言うことか。呼んでも身動き一つしないことか。触ると冷たいことか。ワンとも吼えないことか。  命が失われるという事は、巨大な肉の塊になることか。木箱の中に入れられ運ばれることか。わずか数日で忘れられることか。生きかえると言うことは、止まっていた心臓が又血液を全身に送り、氷のように冷たかったからだが又、温かくなることか。涙を流したり、喜んだり、怒ったりする事か。  生と死の差はなにだろう。決して取り戻せないことか。不可逆的な一方通行ということか。取り返しがつかないことか。再挑戦が許されないことか。だから、人は恐怖を持って死を受けとめるのか。