火傷

 まるでスペースシャトルが3機並んで立っているような若者が、目薬を買いに来た。ズボンのすそが恐ろしく開いているので、とび職なのだろう。その中の一人が目が痛くて涙が出るといっていた。薬剤師が眼科を受診するように勧めていたがどうもその気はないらしい。仕事が忙しくて抜ける時間がないと言う。余程好景気で仕事に追われているかと見えるが、実際はどうか分からない。恐らく昨日溶接を使ったと言うから目の火傷だと思うので、消炎効果のある目薬を薬剤師に頼んで出してもらった。すると高くなければ買うと言っていた。医療用の目薬で500円だと言うととても安心したみたいで、喜んで買って帰っていった。残りの二人もとても安心したみたいな顔をしていた。3人とも僕のほうを見て笑顔を見せありがとうと礼を言って出て行った。  姿格好がとても奇抜なので、一見とっつきにくいだろうが、僕はこの種の人達が好きだ。高所恐怖症の僕にとっては尊敬の対象でもあるが、主張がとても下手で、よいことをするにも、悪いことをするにも不細工なのがなかなかいとおしい。悪意を隠す雄弁や外見より、はるかに道徳的だ。いくらすそを広げたところで、臆病な心は隠せやしないのに、借りてきた猫ならぬ、借りてきたスペースシャトルだった。