残飯

 この田舎には勿論ないし、都市部に出ていって利用もしたことがないから、僕には分からないのだが、ネットカフェを宿泊所替わりに利用している人が多いらしい。1時間100円、パソコン1台と椅子があるだけで、1枚の板とカーテンで仕切られているらしい。コインロッカーが設置されていて、荷物を預けているらしい。夜の11時には消灯されると言うのだから、カフェという名の宿泊所なのだろう。  そこをねぐらに日雇いに出るらしいが、正式なアパートに入るには敷金が要るから入れない。1ヶ月後に手に入る給料ではやっていけないのだ。その日のうちに手に入る金がないと生活できない。椅子で眠り、30分200円のシャワー、コンビニ弁当、カップラーメン、いつまで健康でおれるだろう。保険証もなく、病気になったらどうするのだろう。若さの貯金がきれた時、恐らくネットカフェからも退場するのだろう。  こんな世の中に誰がした。し掛け人は今日も赤阪の料亭で美酒に酔っている。同じ人間に生まれてきて、こんな対極があっていいのだろうか。明日はわが身かも知れないし、自分の子供達かもしれないし、友人や、知人かもしれない。いい様に操られたあげく、残飯のように公園に捨てられるようでは救われない。僕らは誰よりも偉くないし誰よりも劣りもしない。幾多の困難を乗り越えて上流を目指すアユの大群だ。落ちこぼれを防ぐのは赤坂の美酒のはずだが、彼らこそが超えられぬ堰をいくつも作って、アユの遡上を妨害する。