事情

 突然の家庭の事情で大学を辞めた子がいる。わずか2年前には考えられなかった経済的な事情によるらしい。最近では決して珍しいことではないらしい。薬局内で聞いた話だ。僕らの時代だったら、やめずにバイトしながら卒業すればいいではないかと思うのだが、豊な時代に育った子には、ぎりぎりの生活水準に落とすことは耐えられないのだろう、話題にも取り上げられなかった。  それにしても社会のセーフティーネットはどんどん貧弱になっている。アメリカなみの自己責任が偉い人達の口から上がり、もてはやされ、訳もわからず同調した受益者予備群が、今まさに自分が招いた結果に逆襲されている。この国をリードする豊な人達に、その逆の人達が知らない間に荷担している。憐れなものだ。偉い人達は勉強し自分たちの権利を拡張している。その逆の人たちは勉強しないから、どんどん権利を失っている。格差は広がったものではなく、故意に広げられたものなのだ。  メディアは真実を語らない。所詮大企業なのだ。映像の裏側に、活字の裏側に真実を見つけるしかない。心地よい言葉に躍らされない反骨の精神を鍛えないと、もっともっととんでもない時代が来る。学生を辞める事くらいの選択ではすまされない時代が来る。