マグロ

 マグロの漁獲制限のニュースが繰り返されている。何をそんなに騒ぐのか分からない。美味しいのは分かるが、食べなくてもすむ。元々1ヶ月に1度も口にしないから、何ら経済的な打撃もないし、心理的な影響もない。ニュースで度々見せられたマグロの休まず泳ぎつづける姿が何故か痛々しく感じて、マグロの命が永らえるならそれにこしたことはないと思った。中国ではブルジョア階級がこぞってマグロを食べ始めたらしい。なんでも頭がよくなると言う理由でマグロに人気が集中しているらしい。頭なんてほとんど遺伝で、後天的に出来るのは努力だけだ。金が入るとなにでも金で買おうとするのが世の常で、人の心や地球の資源なども金で買いあさる。  インド洋大津波で仲間とはぐれた子カバが保護され、自然動物園に入ったが、ストレスで食べ物を取らなかった。見かねた係りの人が、100歳のゾウがめと同じ所にいれた。すると子カバは、亀が食べているのを真似て食べるようになった。それからは、子カバは亀を母親と思っているのか片時も離れない。亀も嘗て大人のカバに甲羅を割られたことがあるので、カバを避けていたが、いつのまにか両方がなくてはならない存在になり、1日中より添って過ごすようになった。子カバが、甲羅から頭を出した亀の首をなめているのは圧巻だった。  爬虫類と哺乳類が愛情で結ばれるなんてことがあるのか。こんなに美しいことを自然は見せてくれる。ありとあらゆる生物の命をいただいている人間にいずれは天誅が下っても不思議ではないような気がする。すべての人が「いただきます」と食事の前に言うだろうか。「あなたの命をいただきます」と。人間が生きていくためにどれほどの生物の命を奪っているだろう。魚だって、命の続く限り泳いでいたいし、牛だって、命が果てるまで草原で寝そべっていたいだろう。死を強制される所以なんかないのに。人間さえいなければ天寿をまっとう出来るのに。  犬畜生にも劣ると思っていたけれど、どうやら現代人は亀にも劣るらしい。