転換点

 いつもは使うことのない3階の部屋で、10代の女の子が今眠っている。過敏性腸症候群の相談で県外から来た子だ。お母さんと一緒に来たが、お母さんだけ帰ってもらった。実際にはない症状で苦しんでいる彼女を治すのは、漢方薬半分、客観的な事実半分と思ったから、薬を作った後泊まっていったらと提案したら、かなり迷った挙句、泊まることにした。この決断が彼女の一大転換点になることを望むし、そうなると思う。  今日はとても忙しく、午後は彼女を放っておいたようになった。勿論接待はしないから自由にすると言うのが、僕のやり方だから、それはそれでいいのだが、彼女が一寸出てくるといって、強い風の中出ていって、長い時間帰らなかった時は、僕の娘のように心配になった。一寸見てくるように家族に言った時帰ってきてほっとした。ヨットハーバーの辺りまで、靴擦れをするくらいまで歩いてきたらしい。  明日は朝から岡山に一緒に出かけて、僕の用事に付き合ってもらう。極普通の人間が極普通の行動をするのに付き合って、皆同じだって感じてくれれば、それで治る。薬を渡して、又連絡してくれでは折角会えた人なのにもったいなさ過ぎる。僕を見て想像していた人物像とは違っていると言っていた。どんな人間を想像したのと聞くと、もっと太った人といっていた。おそらく貫禄がある人って言う意味だとおもう。  それにしても実際にない症状で悩み傷つくなんてもったいない。何でそんな症状を知ったのと尋ねると、インターネットで見つけたと言う。皆が悩みを打ち明けて一緒に回復を目指すのならいいが、主観ばっかりの知識では誰も救われない。  明日は是非彼女にご馳走を食べさせてあげたいが、僕のご馳走は、さしずめラーメンくらいかな。