豹変

 今日、ある男性と話していた。なかなか自信に溢れている人で、僕に対してあたかも年下に話すように、時に命令口調でとうとうと自説を述べられた。僕はその自信過剰に閉口しながらも最後まで話を聞いた。そして最後に、彼に、○○さんによろしく伝えておいてと伝言した。すると彼の表情は豹変して、しどろもどろになった。○○さんは到底彼などが話す事も出来ないくらいの人物だ。○○さんの鶴の一声で彼の首など一瞬にして飛んでしまう。  こんなこと日常でしばしば経験しないか。権威にしがみつく人間こそ実は権威に滅法弱い。人を見下すことでしか、或いは人を非難し攻撃することでしか精神のバランスを保てられない人は回りにはいくらでもいるのではないか。  逆に度が過ぎた謙遜をする人がいる。そのくせどこかで自分の実績をそっと組みこんでいる。この辺りの言葉で「慇懃無礼」と言う。謙遜を静かに聞いていると結局は自慢話だったりする。人の心は難しい。うまく生きることばかりを訓練されているから、よりよく生きようと価値観を変えるのは並大抵ではない。それを目指すから人生はやりがいがあるのかもしれない。完成がないものの方が求めるものとしては価値がある。