イカ刺し

 今日の夕方、Y夫婦が、獲りたてのモンゴイカときゅうりとプチトマトとソラマメとかぼちゃを持ってきてくれた。奥さんはお百姓、ご主人は漁師兼お百姓。イカは1軒家では食べれないくらい多かったから、母と兄の家に分けて、野菜は息子に送ってやった。さっきまで生きていたものなので刺身で食べることを勧められた。せっかく新鮮なものだから、上手に料理しないともったいないと言うことで、Yさんの奥さんが台所まで入って来て、刺身にしてくれた。僕は具体的な作業を見ていないから分からないが、とても手馴れた様子で感激ものだったらしい。  この親切は何なのだろう。飾らない言葉、飾らない自然な振るまい。長く僕が薬局を続けることが出来た土壌を見る思いがする。へりくだる必要もなく、反りかえる虚像もいらない。ほんの少しの得てていることがあっても、その他の部分で勝るなどとは限らない。ほんの少し劣ったとしても、あらゆる部分で劣っているとは限らない。とんでもない偉人は出なかったが、とんでもない悪人も出ない。平平凡凡もここまで続けば非凡だ。  未消化のイカが喉のあたりにまだあるような気がする。貧しい時代の名残を経験しているから、腹十二分目でないと満足できない。僕の心も腹十二分目だが、果たしてY夫婦に腹何分のお礼が出来るのだろう。