大金持

 船長がマイクで説明してくれて、スナメリとイルカの違いが分かった。イルカは好奇心が強いから、海面の上に現れてジャンプなどするが、スナメリはほんの一瞬海面に顔を出すだけらしい。もうい一つ、スナメリには背びれがないが、イルカには背びれがある。
 船上では「ほうそうなのか」くらいの印象で、実際には海面に顔を出すだろうスナメリを探すのに懸命だった。同じように「スナメリ発見クルージング」に参加したほとんどの人が海面に目を凝らしていた。僕は「われは海の子」だからスナメリを幼いときには何度か見ているから、必ずしも見たいと言うことではないが、一緒に参加したベトナム人達には珍しいだろうからぜひ見つけてあげたかったのだ。
 今こうしてブログを書こうとしてスナメリをインターネットで調べたみると、イルカにもスナメリにも背びれなんかない。人懐こいのかどうかわからないが、両者の差は体長と生息分布の違いだけで、そもそもスナメリもイルカ科だ。見た目には違いはないのだ。同じ種なのだから。
 神戸にベトナム人をよく連れて行っていたころ、神戸港遊覧クルージングを何回か利用したが、その都度不満足だった。その理由が今日分かった。牛窓のクルージングは島がすぐそばにあり、緑深い森を蓄えているのが見える。海岸線まで迫る緑が、わずかのがけや砂浜を境に海の青につながり、フェリーが残す航跡の泡が気持ちよく伸びる。ところが神戸港は、人工的な景色ばかりで、海は濁った茶色だった。唯一豪華すぎる船の作りが印象的で、今思えば、あの船の作りにごまかされて観光コースに入れていたように思う。
 僕が大金持ちだったら、クルージングと道の駅を整える。