表現

 それはないだろう。本庶佑先生のノーベル賞受賞の感想を述べていた人が「本庶先生は雲の上の存在」と表現していた。そんな表現を使われると僕らに使える言葉はない。表現の仕様がないではないか。何故なら「雲の上」と表現した男性が、東京大学の名誉教授なのだから。
 先にノーベル賞を受賞された山中先生が、今でも月に1度くらい本庶先生を訪ねるらしい。その時は山中先生は直立不動らしい。山中先生をして、そんな態度をとられたら、僕ら凡人は目の前にしたらどんな態度をとればいいのだろう。
 そこで僕は考えた。僕ら庶民が本庶先生を表現するときに成層圏の人」と言い、目の前でお会いするときは「死んだ振り」とてもお相手できるものではない。改めて学者っていいなと思った。福島の事故でやたら学者面した人間が出てきて、政府に気に入られるようなことばかり言った記憶がまだ鮮烈だから、一概に信用していない、と言うか嫌悪感さえ持っていたが、やはり芯が通っている人は見ていて気持ちがいい。そういった人になかなか遭遇できなくなったが。