焚き火

 いつからだろう、全く予定のない日は。無理やりにでも作ってあげれば3ヶ月の契約で来ているかの国の3人は喜んだだろうが、何故か今日は自制した。と言うのは事務仕事をないがしろにしている自戒の念もあったし、寮として貸してあげている隣の古民家の柿ノ木から落ちた葉っぱや実が、せっかくきれいに砂利を敷き詰めた庭に、散乱しているのを見ていたから。そして砂利の下から、しっかりと草が顔を出し、もう止められないくらいの勢いを見せているのも知っている。かの国の女性達は農家の娘が多いのだが、何かを作ることに関しては力を発揮するが、草を抜くとか、庭を綺麗にするとかはどうも関心の外らしくて、何もしない。
 そこでしっかりと時間がある今日、自分の手で綺麗にしようと思った。砂利の上の葉っぱを1枚1枚拾っていたのだが、これでは埒が明かないと思い熊手を使ってやってみた。すると砂利の上でもかなりの確率で葉っぱを集められた。予想していた時間より随分と早くきれいになった。そこでそれを焼くと灰になってほんの小さい体積になった。本来なら仕事をしている時間帯に戸外に出て、焚き火を楽しむ。緊張感から自然に解放される。何もしないことがこんなに楽なのかと心も体も感じた。