お医者さんみたいに命を救うことは出来ないが、生活を救うことは僕達にも出来る。特にお医者さんでは埒があかない場合に僕らの出番だ。
 この女性は20年前から腹痛で苦しんでいた。当時結婚や就職で一気に環境が変わったせいみたいだ。良くある話かもしれないが、うずくまるほどの痛みが20年も続くのは良くある話ではない。当然体重は増えずにモデル体型を大きく越えている。食欲もなく日々の生活は、楽しいものではなかったろう。
 僕の漢方薬を飲み始めて1ヶ月たった。電話で話をするのが3回目だが、顔を見なくても明るくなったのが伝わってくる。声も落ち着いて大きくもなり、何より電話の向こうでよく笑ってくれ始めた。
 彼女が嬉しそうに報告してくれたのだが、何と3年ぶりに新幹線に乗って東京に行けたそうだ。新幹線の中で腹痛がしたらしいが、僕の漢方薬を飲んだら20分くらいで収まったそうだ。以前ならその後何日も動けなくなるそうだが、20分で治ったことで「これからお腹が痛くなっても20分もすれば解決する」と言うことが分かって大いに自信を持ったみたいだ。ちょうどアメリカから帰国している友人にこれでいつでも逢えるというようなことを言っていた。
 どうして遠く離れた僕の薬局を探し当ててくれたのか分からないが、こんなに田舎の薬局が人生を良質のものに変えてくれるとは思っていなかっただろう。藁をも掴む気持ちで接触してくれたのだろうが、後悔させることがなくてよかった。