満足

かの国のある女性が、通訳を介して質問して来た。不思議な質問だったが、その女性にとっては長い間、引っかかっていたのかもしれない、結構真面目な顔をしていた。文化の違いを感じていて、それを確かめたかったのかもしれない。
 「オトウサンは、スーパーへ行かないのですか?」と言う質問だったが、最初は質問の意図が分からなかったので「滅多に行かない」と答えたが、実は結構行く。恐らく彼女は、僕が買い物籠をぶら下げて、商品を一杯籠の中に詰め込むような姿を目撃しないから不思議に思ったのだろうが、さすがにそれはしない。その手のことは全て妻の分担だ。かの国では男性がよく手伝うというか家事は共同作業らしいから、僕の姿を近所のスーパーで見かけないのが不思議だったのだろう。
 僕は日曜日だけスーパーに行く。買うのはジュースに酒を混ぜているような飲み物で、アルコール濃度が3%か6%のものを買う。味はレモンとかグレープとか色々ある。多くを経験したいから、毎回掘り出し物がないかよくチェックしている。それ以外は基本的には買わない。1週間の僕へのプレゼントと言うかご褒美がそれだ。せめて日曜日だけはそれらしく。
 ところがその時に嫌な経験をすることが多い。一所懸命喋っている、マニュアル化して心がこもっていない場合もるが、店員に対して全くの無言を通す人が多いのだ。頭を下げることもしない。子供連れの人もやるが、子供はそれをじっと見ていて、頭の中にインプットされてしまうから、人に何かをしてもらったときにお礼を言うような常識は育たない。そんな子が大きくなったらその親に反旗を翻すことも多いことを覚えておくことだ。何を勘違いしているのかしらないが、自分のほうが立場が上とでも思っているのだろうか。そんな親に限って、自分の仕事上はへりくだったりしているものだ。どこかで穴埋めをしなければもたいないくらい日常に自信がないのだろう。
 たった100円そこらのお酒で、僕は満足。