白内障

 先日白内障の手術をする予定だと薬局で話していた女性が、今日ゴーグル姿でやってきた。術後瞼が痒くて、その塗り薬を処方箋で取りに来た。  瞼の痒みはあるものの、上機嫌だ。その理由はとてもよく見えるようになって「輝いて見える」と言う表現を使わなくてはならないくらいの変化らしい。今まで見ていたものの全てが実は色あせて見えていたってことに気がついたらしい。わずか15分の手術で生活の質がずいぶんと上がったみたいだ。自然界のものをはじめ、薬局の装飾や、人の着ている服、或いは自分が着ていた服、そして趣味のパッチワークの作品なども、術前の見え方とはかなり違うらしい。自分の服やパッチワークの作品が、いかにも鮮やかさに欠けていた事に気がついたらしい。そして何よりショッキングだったのは、鏡で自分の顔を見た時に、しみだらけなことを突きつけられたことで、このときばかりはよく見え出したことが裏目に出たと言っていた。出来れば見たくはなかったと。  嘗ては白内障になるほど長生きが出来なかったから、手術をする人も少なかったが、今は多くの人が経験をするようになった。手術方法もずいぶんと発達したみたいで、全く苦痛もなく15分で終わるらしい。医学の恩恵を大いに感じるところだ。今だ「初めての病気で死ぬ」国が結構ある中で、死に病でないと死ねない国に暮らすことが出来る幸運を、外国の人から教えられる。この国は、見たくないところも大いに抱える国だが、輝くところもそれなりにある。