共同作業

 漢方薬でお世話をする仕事をしている身にとっては、太ったりしたらこの上ない朗報と受け取ることが多い。この女性もその中の一人だ。
 本人の薬ではなく家族の薬を取りに来たその顔はふっくらしていた。女性にとって褒め言葉ではないから単刀直入には言えないから「自分、少し太ったのではないの?」と尋ねた。単刀直入のように聞こえる人もあるかも知れないけれど、僕にとっては結構迂回している。するとやはり5kgくらい増えたらしい。体重が増えるときは何でも治るという信念の僕はただただ喜んだ。もうずいぶんと長い付き合いのその患者さんはその理論も恐らく僕から聞いていたのだろう、照れながら喜んでいた。体調のよさを実感しているのだろう。
 そもそもその女性が僕の薬局に数年前突然来るようになったのは心の病気だから、心身ともにまいっていて、食事もままならなかった(だろう)。安定剤を複数飲んでいたから、まず、心の病の克服、その次に病院でもらっていた数種類の安定剤とのバイバイ。2段構えで一緒に努力した人だ。家族の病気や家業の繁忙などで心身ともにすり減らしていたが、幸運にも僕の漢方薬が奏功してどちらの目的もほぼ完成させた。
 あれだけ深刻で険しい顔をしていたが、今は柔和で、それなりに人生を楽しんでいる。その過程を一緒に経験でき、望まれる到達点に誘えるのは田舎の薬剤師にとってはこの上ない喜びだ。華やかとは縁遠い田舎で、たいした舞台が僕達にあるわけではないが、いたわりあいながら体調を回復していける関係は何にも勝る。たった5kg太ったことでも、僕とその女性には共同作業をやり遂げた達成感がある。失うばかりの、手放すばかりの世代にも、こうした季節はずれの花も時に咲く。

墓掃除

 小雨になるのを待って、隣の寮に住むベトナム人を連れ出した。名目はお墓の掃除だが、実際には太白梅祭りの会場に連れて行くつもりだった。もっとも午後3時を回っていたので、開会式当日のイベントは全て終っていて、まして冷たい雨交じりの風が吹いていたから人はいないだろうと予測していた。案の定会場に着いたときには人影はなく、公園に入っていっていいのだろうかと不安になるくらいだった。
 僕はかつて一度だけ下から眺めたことがあるが、実際に足を踏み入れるのは初めてだ。小高い丘の上に駐車場から梅の花が見える。梅祭りが開催されるだけあって花は咲いていた。花音痴の僕には梅がいつ開花するか全く分からない。梅が咲いているのを見たときには少し安堵した。
 花に誘われるように登っていくと、木の橋がモザイクのように渡された池があって、なかなかシンプルだがモダンなつくりだった。梅の木も池を囲むように沢山植えられていて、白と赤色の花がそれぞれ競い合って咲いていた。雨傘片手で、墓掃除目当ての作業着姿の彼女達は花に喜び、自分を入れないで写真を撮っていたが、そのうち上半身だけは入れた姿を自撮りし始めた。もし梅を見に行こうなどと言ったものなら何時間化粧のために待たされるかわからないから、墓掃除といったが、嬉しそうに写真とりまくり状態になったときにはそのことを少し後悔した。どうせなら美しい自分を撮りたかったろうに。ただ僕にはカメラでは撮れない彼女達の美しさは十分分かっている。冷たい風が冷たい雨をかさの横から体にぶつける天候の中、快く墓掃除を引き受けてくれたのだから。誰が全く他人の墓掃除を休日、それも雨の中手伝ってくれるだろう。
 公園の中にピラミッドのような小山があった。石段を登っていくと360度見渡せる。そんなに高くないから展望はいまいちかもしれないが、それでも吉井川の流れが手に取るようにわかり、僕にとっては新発見だった。僕の家から車で20分もかからないところ、その付近は毎週日曜日には車で通過するところに、シンプルだがとても手入れされた公園があることには気がつかなかった。道路沿いに立てられた梅祭りののぼり旗に誘われるように訪ねてみたのだが、ちょっとした好奇心が新たな体験をもたらしてくれる。管理している岡山市に感謝かな?

無神論者

 「つらいなあ」その哀しげな言葉に胸がつまりそうだった。僕より少しだけ年上だが、がっちりした体格で見るからにエネルギッシュな方だから、ふと漏らした言葉が余計に切なく響いた。
 ある目の病気で視界がだんだん狭くなっていた。数年前に初めて尋ねてきてくださったが、僕の漢方薬が少しはお役に立てて、進行はこの間ほとんど止まっていた。眼圧は正常域に収まった。ところが一昨日来られたときに、視界が少し狭まったと報告してくれた。毎回来られるときには検査結果を尋ね、「調子いいです」の返事をもらい続けていたから、お役に立てれていることで毎回安堵していたが、今回初めて進行したと言う報告になってしまった。永遠にお役に立て続けれないことは当たり前の話で、どなたをお世話していても覚悟していることだが、やはり目のトラブルで進行されてしまうと、その先の辛さが想像出来るので余計に辛い。
 どんなトラブルでもいつかは受け入れなければならない時が来るが、できれば受け入れることに抵抗がなくなるまで待ってほしい。「年だから仕方ない」と心底思えるときまで待ってほしい。未練を残さなくてもいいときまで待ってほしい。誰もが通る道なら、皆と同じ苦しみで許してほしい。幸せから引き算しても、せめて少しでも幸せが残るところで許してほしい。
 僕は無神論者で生きるほど心は強くないのだと思う。

今日は広島で勉強会があり、出席するつもりで岡山駅あたりまで行ったのですが、
急に雨脚が強くなり、傘を持っていなかったので気持ちが折れて帰ってきました。
そのため今薬を作りましたから今日発送します。
お仕事に行かれ始めたらしいですね。とてもよいことです。
あなたのような症状は現場でしか治りませんから、ぜひ現場を持ってください。
そこで治ってこそ本物です。
さて、あなたが〇〇みたいですが、奥さんの言われることは大いに当たっています。
ただし、それは欠点ではなく、そのことゆえにあなたしかできないことも多々あるのではないですか。それだから失敗しない、
それだから信頼を得るってことも多いと思います。ひょっとしたら、それだからこそ人様の危険を察知して命を救ったりもできるのだと思います。
もっと言うと、奥さんもそういったあなたの個性が好きになった理由の一部かもしれません。あなたとまるで正反対の人と結婚するでしょうか。
で、ここからが問題です。
自信を持って〇〇であっていいと思います。ただしその武器は、貴方を守るためではなく、多くの人を守るために使ってください。
僕くらいの年齢になると、もう終っていますから世のため人のためって生きているのです。
そうなると恐ろしいものなんてどんどん減ってきます。、
若いときにこんな心境になれていたらもっといい生き方が出来たのにと恨めしく思います。
雨がやんできました。広島に行けばよかった。
後悔ばかりです。
どうです、皆同じだと思いませんか?

ヤマト薬局

吸引力

 我が家にかかってくる電話は、ほぼ薬に関するものだが、その日の朝、一番の電話は訃報だった。この年齢になれば、次第に失っていくのが自然だと思うが、それでも僕は、いまだ新たに手にしているものがあるから踏ん張っておれるのかもしれない。そう思った。
 明日は広島に漢方の勉強に行く。お医者さん中心の勉強会だが、薬剤師にも案内が来るから行く。僕の唯一の先生が勉強会を解散されたから、僕が新たな漢方薬の知識を得る場所が無くなった。医師会の勉強会に出席しても、何十年前に得たような知識しかもらえないことがほとんどだが、たまに1秒くらい琴線に触れる内容があるから、それを求めていく。ただ行くと、広島県で頑張っておられるお医者さん達の熱量が伝わってくるから大いに刺激はされる。世間的な評価が圧倒的に上の職業の方たちが頑張っているのに、薬剤師ごときが努力しなければ存在価値すらなくなってしまう。だから、腰が痛かろうが、体力的にきつかろうが行く。
 経済的に余裕があれば、広島に行くたびにベトナム人を数人ずつ連れて行けるが、そこまでは出来ない。たいしたことはしてあげることはできないが、若い多くの外国人と知り合う機会を得ている。3年ごとに入れ替わる人々を迎え、送ることを10数年続けている。薬局を訪ねてきてくれる人も僕の薬局では圧倒的に若者が多い。力及ばず、お手伝いかなわず去っていく人もいるが、それでも訪ねてきてくれる人は多い。
 この年齢になってなお多くの人と知り合うことが出来ているのは、形あるものに対して好奇心は失せてはいるが、心の目でしか見えないものにはますます心がひきつけられるからだと思う。そうした吸引力は失うことを受け入れられるようになってから身についたように思う。

人体実験

 アメリカの手下を戦後ずっと続けている痔見ん党などに任せていると、アメリカの肉が安いと買わされ食べさされている庶民は、命を縮める。あなたの周りで若くして亡くなった人の中には、実質痔見ん党に殺された人がいるってことだ。何も知らされないことに疑問や怒りを感じないこの国の人間の多くは、自分で絞首台に登っている様なものだ。コロナでも同じ目にあうかも。何しろ汚部は庶民のことなど所詮理解できない人間で、財界におべっか使いまくりだけなのだから。

 この1月から関税率が下がり、米国産牛肉の輸入が急増。米国産牛肉には、1989年にヨーロッパ諸国(当時のEC)が輸入禁止に踏み切った「ホルモン剤」投与の問題が指摘されている。
 1950年代から、アメリカ産牛のほとんどが『肥育ホルモン剤』としてエストロゲンなどの女性ホルモンを投与されて育てられている。『成長促進剤ホルモン』とも呼ばれ、牛の成長を早め、飼育コストが節減できるから。このような女性ホルモンが残留した肉は人間の子供の性成熟に拍車をかけたり、がんの発症を誘発したりする懸念がある。最近では、女性ホルモンを多く利用・服用すると乳がんが増えるという研究データもあり、ホルモン剤の使用はさらに疑問視されるようになっている。肥育ホルモンによる影響が出るまでには数年~数十年かかる可能性もあり、それだけの期間、危険性が示唆されているものを人間に食べさせ続ける“人体実験”はできない。
 EUは『疑わしきは未然に予防しなければならない』という考えだ。それに対し、アメリカは『悪影響が確認できなければ大丈夫』という考え方。それがいかによくないかは、昭和の日本に大きな被害を出した水俣病が象徴している。当時、水銀が影響していたとすでに推察されていたのに『因果関係が証明されていない』ということで工業廃水が排出され続け、被害が拡大した。
 EUアメリカから肉の輸入を止めて7年で、EU諸国の多くで乳がん死亡率が20%以上減り、なかには45%近く減った国もあった。EUは国民を守ろうとアメリカに立ち向かったが、日本はそうはならず、堂々とスーパーに陳列されている。
「無作為に札幌市内で購入した牛肉の残留ホルモン濃度を最先端の測定機器で検査したところ、アメリカ産牛肉から国産と比べて赤身で600倍、脂身で140倍ものエストロゲンが含まれていたことがわかった。日本で乳がんや子宮体がん、子宮頸がん、前立腺がんなどのホルモン依存性がんが急増した原因は、アメリカ産牛肉の消費が増えたことと関係があるのでは、という疑惑を生じた。「発がん性リスクとの関連ではわかっていない部分も多いのですが、安全性が証明されていない以上、私の家族にはアメリカ産を含む輸入牛肉は食べないよう言っています」
 これまで指摘されてきたように、日本では乳がんが年々増加している。1981年には4100人ほどだった乳がんによる死者が、2017年には1万4000人を超えている。また、30~64才の女性では死亡原因のワーストワンだ。さらに、乳がん患者の年齢層に着目したこんな見方も衝撃的だ。
「日本人の乳がん、子宮体がん患者の年齢分布を見ると、50代と70代にかけて2つのピークがあるグラフになっています。肥育ホルモン剤入り牛肉を禁輸しているEUでは70代に1つピークがあるだけ。戦後生まれの70代と違って、子供の頃から肥育ホルモン入り牛肉を食べ続けてきた今の50代に、影響が出ている可能性がある。

作品

 テレビに出てくるどんな芸NO人よりその道の才能がある。こんなに瞬間的に爆笑させてくれる一発芸はめったに出会えない。
 ニュースの下段に投稿するシステムがあるみたいで、めったに目にしないが今日は偶然目にした。ほんの数人だったがなかなか傑作があって、思わず噴き出した。これを僕一人の体験にするにはもったいないので披露する。
 テーマは特殊詐欺に関するものだったから、いわゆるオレオレ詐欺なのだろうか。フィリピンで摘発されたニュースに対するコメントだ。

「うっかり薬でももっててくれればドゥテルテが始末してくれるかな?」
「詐欺師の情報を聞き出したら死刑で良いでしょ( ´艸`)」
「そちらで、警官の射撃訓練に使って下さい。」

僕の爆笑ネタ1位は3番目の方だ。このときに噴き出した。1番目も2番目もなかなか面白いが、噴き出すほどではなかった。でもどなたの作品?にも、どうにも無くならないその手の事件に怒り心頭なのはよく伝わってくる。多くの国民が同じ怒りをかかえ、どうしようもない無力感が漂っているのではないか。取り締まる側が、弱者に目を向けるのではなく阿呆大臣にばかり尻尾を振るようではなんら解決できないことを国民は知っている。ユーモア作品か川柳にでも投稿して憂さ晴らしするのが精一杯なのだろう。上から下まで悪が蔓延るこの国で、頑張って投稿してほしい。ただし、もっと巨悪を相手にその素敵な才能を使ってほしい。