テイクファイブ

 ジャズはテイクファイブ。それ以外は知らない。ただジャズそのものは心地よいから薬局で流し続けている。演奏者の名前も知らないし歌手の名前も知らないが、聞いていると心地よい。
 漢方薬を取りにくる子がピアノをやっていると言った。ただ、今は体調不良で弾けないと言うからそんなもったいないことはない。僕なんかに言わせれば、漢方薬よりピアノの方が体調に貢献しそうだ。ただ、これは楽器が出来ない人間の言うことで、本人にとってはピアノどころではないのだろう。
 このところ、少しずつ元気になってきているのが血色などで分かったので、それと少し弾く気が出て来たと言ってくれたので、思い切ってテイクファイブを紹介してみた。クラシックを弾けるのだったら、ジャズも弾けるのではないかと言う全く根拠のない思い付きだが、2週間後の今日来た時に、半分くらい弾けるようになったらしい。
 ああ、やっぱりクラシックが弾ける人は、ジャズも弾けるんだと、新たな発見。あの難解そうなテイクファイブを僕と縁がある人が弾くと言う、ほとんど他力本願的な希望が叶いそうだ。実際に彼女が弾いているところを見たり聴いたりすることはないだろうが、一人の少女が、おじいさんにあたるような僕と、漢方薬ではなく、音楽と言う切り口で繋がることが嬉しい。
 彼女が落ち込んでいる時に大塚まさじの「メトロ」を紹介し、テイクファイブを紹介し、少しでも半世紀前の価値観がお役に立てれればとお節介をする。まるで時代錯誤かと思われそうな作品だが、僕らの時代には、恐らく今でも通用する価値観が多くの青年に共有されていた。あの僕らを鼓舞した価値観が、なくなっていいはずもないし、いつかまた必要とされる時代が来るかもしれない。ただ隠し持っていれば波風は立たないが、人のお役に立てれる機会を失うことにもなりかねない。
 次は何を紹介しようかと思うが、もう僕には引き出しは残っていない。

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