ホテルリマーニ

 10年以上訪れたことはない。必要もないし、利用してみたいとも思わなかった。経営者も何度か変わったように聞いているし、そのたびに高くなったとか安くなったとかの噂も流れてきていた。値段が高くなったり安くなったりするのは、経営が安定せずに試行錯誤している表れだろう。
 現在がその高い時期か安い時期か知らない。ただ僕は招かれた身だから関係ない。ただし、食事の前にウエイターから飲み物を尋ねられ、メニューを見せてもらったときにウーロン茶が300円、小瓶のビールが900円と言うのを見つけた時には「いいです」と即答していた。僕のこの手の価値観ははるか50年前の学生時代から変わっていない。
 と言えばなんだか否定的な意見に聞こえるが、食事のために借りていた部屋は2階にあり、佐竹画伯が気に入り長年描き続けた穏やかな多島美が大きなガラス越しに広がる。正面には犬島、その向こうには四国の屋島。西には小豆島。その他名前の知らない島々。
 牛窓で育った人間でも、この高さから、それも建物の眼下に広がる水面に反射する太陽の光を避けながら眺めるようなことはめったにない。まさに自分が立っている部屋から海が遠く四国まで繋がっているかのように見える。
 息子が住んでいるマンションはもっと高くて、同じ景色を見ているはずなのに臨場感はない。海から数十メートル離れているせいだろうか。まるで絵画のような景色でそれはそれで美しいが、一つ一つの波の姿は見えないし音は聞こえない。
 恐らく遠くから来られた方は、この景色と料理に満足して帰られるだろう。そもそも僕みたいに車で5分の所に住む人間のためにできてはいないから、ビールやウーロン茶代を倹約しようなどと言う人間はいないだろう。
 丁寧だけれど親しみやすかったスタッフのもてなしや立ち振る舞いは僕には全くの非日常でくすぐったかったが、やはり心地はいいものだ。親子と言うより同業者みたいな関係の家族だけれど、接待され下手の僕にはこれくらいが限界辺りで止めておいてくれて助かりもし、ありがたくもあった。

 

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