残念

 急にパトカーのサイレンが後方から聞こえ、何かをマイクで喋りだしたが、安全運転に徹している僕には関係ないから悠々と走っていたら、後方につけられ口調が厳しくなった。その時点で僕かと思ったがまだ余裕はある。何かの間違いと言うか、交通違反でないことには確信を持っていた。
 ところがだ、一方通行違反だった。僕の記憶では違反とされている方向に走っている車はしばしば見ていたから合点がいかない。でも警察官が間違えるはずがない。後で気がついたことだが、200メートルくらいあるその道路の僕が侵入しようとした側30メートルくらいだけが一方通行なのだ。30メートルくらいのところにある四つ角から進入してきた車はどちらに向かって走ってもいい。要は、天満屋ハッピータウンと言う大きなスーパーのために作られたような規則だ。それがあるからさも専用道路みたいな規則が作られている。
 ある女性を、玉野教会から家まで送ったのだが、朝来た道を忠実に帰って行ったら一方通行の中のお家だと思い知らされた。普通なら教えてもらえるところだが、少し会話能力が不完全な方だから僕に教えられなかったのだろう。軽微な違反だからと言って6000円の罰金と1点減点らしい。僕は自分では知らなかったがゴールド免許証?と言うやつらしくて警察官が残念がってくれたが、その価値が何かも知らないからどうでもよかった。警察官が残念がって、僕も残念がったが対象は違う。
 いつもは妻が送り迎えするのだが、今日は疲れていて教会には行けないと言っていた。そこで女性の送迎を頼まれたのだが、二つ返事で引き受けて、いつもより早く家を出た。岡山市で女性を乗せて、児島湖あたりを玉野に向かって走っているときに、教会で見かけたベトナム人の若い男性がバス停に立っているのを見つけた。しばらく行き過ぎたが、目撃したのに乗せないことに罪悪感を覚えて引き返した。
 教会に行く前にパソコンを開き、二人の新しい方から相談メールが入っているのに気がついていた。だからミサの後急いで帰って返信する予定だった。その女性を送ってくれるもう一人の方が教会に来られているのに気がついたときには頼んでみようかなと一瞬考えたが、それは僕の都合を優先した判断だから許されないだろうと思った。
 頼まれれば原則として応えられるように努力する。どうせ何かをするなら人の役に立つようにする。人に尽くして無形の喜びを頂く。そうありたいと務めているところにサイレンの音。僕の努力を萎えさせるが如く鳴り響いた音が僕の「残念」