悲鳴

 今日は多くの方に迷惑をかけてしまった。今日もかな?
 僕の機械音痴はもう確信犯の領域に達していて、それを克服しようなどと言う気はさらさらない。今まで何とかなってきたからこのままで通すし、輪をかけて進化するだろう。こういった時は老いを巧みに利用する。「もう歳だから」を連発して居直る。「もう歳だから」は口にしても恥ずかしくない魔法の言葉だ。時に相手がとても優しくなったりして予想以上の収穫があることもある。
 今日の迷惑はいつもながらのパソコンの故障だ。故障と言うとなんだかパソコンが悪いように聞こえるが、罪を機械に擦り付ける気はない。責任は僕にある。いつもの誤操作だ。ある作業をしていて、いつもなら画面が自然に変るのを待つのだが、なぜかしら近道を選択した。その近道を選択したときに偶然パソコンがシャットダウンした。それからは何故か再起動できなくなった。素人だから放っておけばよかったのだが、分からないくせに闇雲に操作してしまった。それが結局は自分で自分の首を絞めることになり、にっちもさっちも行かなくなった。まあ、いつものことだ。
 こんな時はいつも漢方問屋の専務さんに頼む。朝になるのを待って連絡した。できるだけ早く行きますと言ってくれたが、忙しかったのだろうお昼前に来てくれた。いったんパソコンの前に腰掛けるとあっという間に直してくれたが、結局僕がやるべきことを始めることが出来たのはお昼前だった。3時間僕は漢方薬を作ったり、相談の返事を書いたりすることが出来なかった。又メールでの途中経過や質問にも返事を書くことが出来なかった。だから僕にメールをくれているだろう人たちが、僕からの返信が遅いと不安になっているのではないかと言う「不安」が僕の頭の中を駆け巡った。僕が漢方薬を作っている人たちは繊細な人が多いから、こうした返信もよほど注意しなければならない。不快な思いをさせてしまったら元も子もない。
 それにしても、日常どれだけ多くの人に助けてもらわなければならないかよく分かる。恐らくどんな立場の人、階級の人でも同じだろう。上流で暮らす人も下流で暮らす人も、多くの助けなくては暮らしていけない。いくら気張っても、不都合なんてのは必ず襲ってくる。最後の究極の不都合を待たずに多くの不都合が立ちはだかる。孤立無援も孤軍奮闘も五十歩百歩。悲鳴を上げるが勝ち。