自転車

 意外なタイトルを見つけた。「自転車通勤者は徒歩通勤者より全死因死亡リスクが低い」  毎週送ってくる医学情報の中の1つのタイトルだ。どちらかと言うとその逆のような印象だが、意外や意外だ。その論文を発表しているのが英国・グラスゴー大学のCarlos A Celis-Morales氏と言うことで、信憑性は高い。まして26万3,450例を前向きに追跡しているというのだから信じないわけには行かない。実際の文章は難しすぎて分かりにくいから結論だけを言うと「自転車通勤は心血管疾患・がん・全死因死亡のリスク低下と、徒歩通勤は心血管疾患のリスク低下とそれぞれ関連している」だから「徒歩通勤や自転車通勤は、日常の身体活動を高めることができる方法として推奨される」「自転車通勤は、全死因死亡、がん発生・死亡、心血管疾患発生・死亡とも有意に低下」「同様に自転車通勤を含む混在群も、全死因死亡、がん発生、およびがん死亡のリスクが有意に低かった」「心血管疾患発生のリスクについてみると、自転車通勤群、徒歩通勤群ともに有意な低下が認められた。心血管疾患死についても、自転車通勤群、徒歩通勤群ともに有意な低下が認められた」「一方で、徒歩通勤群は、全死因死亡、がん関連アウトカムついて、統計学的に有意な関連はみられなかった。徒歩通勤を含む混在群も、測定アウトカムのいずれについても顕著な関連はみられなかった。これらの結果を踏まえて著者は、「アクティブ通勤を促進・支援するイニシアティブによって、死亡リスクを減らし、重大慢性疾患の負荷を減らせるだろう」とまとめている。  やっぱりややこしい。僕ら素人でも分かるところを抽出したのに、分かりにくい。こうなればざっくばらんに「自転車も歩きも、心臓にはいいが、ガンなどのすべての死亡率を下げることには自転車が歩きより勝っている。歩くだけより、自転車と歩きと言うように、意地でも自転車を取り入れたほうが死亡率を下げるみたいだ。自転車協会が聞いたら泣いて喜びそうな結論だが、この論文は不思議なことに何故そのような結果がもたらされるかについては一言も触れられていない。統計学的な論文でしかないが、何故って所を是非知りたいものだ。  こじ付けでも何でもいいからそれらしきものを想像してみると2つのことが思い浮かぶ。1つは大腿部の筋肉、1つはバランス感覚。普通に歩いていてまず筋肉はつかない。足を広げて自転車をこぐのでは何の意味もなさそうだが、通勤に使っている人なら恐らく懸命にこぐ。だから大腿部の筋肉がついて、これが熱量を生産して健康体を維持しているのだろうと想像できる。もう1つはバランス感覚。当然といえば当然だが、倒れないために無意識でバランス感覚を働かせ続けている。これもかなり貢献してくれているのではないか。  なにわともあれ自転車を僕自身も見直そうと思う。自転車専用道路が牛窓にはないために車が怖いからあまり利用しないが、僕の薬局のように自転車操業よりははるかに安全そうだから。