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 わざわざ助手席を選んで優先的に乗せて上げているのに、扉を閉めた瞬間からウェ、ウェとえづく。世界で一番乗り物に弱い人だとギネスに登録してもらいたいくらいだ。だから恒例の帰国前の京都旅行も辞退した。彼女が行かなければ私もと計3人が辞退して、今度の秋の京都旅行はなくなった。倹約できてありがたいが、今まで20人以上連れて行ってあげているので、何となく公平でないような居心地の悪さを感じたので「何処だったら思い出を作れる?」と尋ねてみた。すると無類のお花大好き人間の彼女はチューリップを見たいと答えた。これなら簡単だ。恐らく数年前からこれもまた恒例にしているドイツの森のことを指しているのだと直感でわかった。去年も一昨年も、車に弱いことを理由に参加しなかったが、同僚の写真を見て車酔いのリスクを犯してでも最後に見たかったのだろう。  お花大好き人間を、お花どうでもいい人間が案内するのだから、余程有名なところしか知らない。そうしてみるとドイツの森はうってつけだ。場所が田舎で道中が混まない。施設内も人がまばらで混雑しない。入場料が安い。そこそこ花がたくさん咲きそれなりに管理が行き届いている。アトラクションが大人が楽しめるようなものが少なく、自然を満喫することに専念できる。  褒めているのかけなしているのか分からないかもしれないが、僕が言いたいのは「僕にはうってつけ」かの国の女性が門をくぐり眼前に広がる花を見た瞬間に歓声を上げたくらいだから「無類の花好きにもうってつけ」ってことだ。ただ僕には解せないことが1つある。今こうして今日のことを思い出しながら文章を書いていても気にかかる。それはチラシやホームページの宣伝で唄っている「チューリップ5万本、菜の花50万本」誰が数えたんじゃあ!