単純明快

そうか、動物の中で親の世話を子がするのは人間だけなのか。意識したことが無かったから、そう言われてみるとそうかもしれない。子を慈しむ気持ちは動物には共通なんだと、涙さえ誘われる映像をしばしば目にするが、確かに子が親の世話をしている映像は見た事がない。だから人間はすばらしいと、その女性映画監督は述べていたが、最近ではどうもどちらかと言うと自然の摂理の方に近寄りつつあると思う。とか言う僕も正にその一群で、母を姥捨てしてとても世話をしているとは言えない。  自然界では親の世話をするほうが不自然らしいから、僕はどうやら自然らしい。ただ、人間様の道徳にはかなり反している。人間の寿命が短くてころっと死んでいた頃は動物に近かっただろうが、ひょっとしたら動物そのものだったかもしれないが、これだけ長生きするようになるところっとは難しく、目の前で苦しんでいるのを見ておれなかったのかもしれない。太古の時代には、看病はあったかもしれないが介護は無かっただろう。  世間では、僕を含めて子に不満を持っている人はわんさといるだろう。ただ、この事実を知ったら、そうか自然に回帰しているだけかと何か吹っ切れるものを感じはしないだろうか。先祖帰りならぬ太古帰りをしていると思えば、気持ちが随分と楽になる。動物は親の世話をしない。なんて単純明快。胸のつかえが取れそうだ。