出番

 繊細さも度が過ぎると欠点になる。その度合いが結構難しい。長所だけに留まっている人は幸運で、それが大いに身を助ける。だが繊細さゆえに、1の体調不良が10になる人もいる。病院に行くと大抵精神安定剤を出されるが、こういった人は薬がよく効くし又効かない。  本人にとっては耐え難い不調なのに、病院では相手にされない。何かあると駆け込んでくるが、何もないときの疎遠さとはかなりのギャップがある。懸命に訴えるが、これでは医師に相手にされないのも分かる。医師は命にかかわるトラブルの専門家だから、それとは程遠い訴えにはおよそ付き合いきれない。医師と言う資源の浪費は国にとっても受け入れがたいだろう。  何故かこういったときには僕を思い出してくれるみたいで、残務整理を任される。難病ではなく、複雑怪奇なものは漢方薬が対処しやすいので、出番が多い。今回も「それを治せと言うのか」と言うようなトラブルだが、断れないたちなので俄然頑張る。「こんな体では、健康食品など売れないから、是非治してください」と言われて、初めてどんな仕事をしているか分かった。それは確かに困るだろうなと思ったが、所詮健康食品の販売だから、そんなに気張ることはない。どうせ効果など期待できないのだから、財布に効けばいいのだ。まして医者でも病気になったり癌にもなるのだから、健康食品や健康器具を扱う業者が健康であらねばならないなんてありえない。生身の姿で、私体調がよくないのと正直に答えたほうがいいと思う。  魚嫌いの漁師がいてもいいし、牧場を経営する菜食主義者がいてもいいし、虫歯だらけの甘党の歯医者がいてもいいし、金のために働かない政治家がいてもいい。もっとありのままに己をさらけ出し、楽に、らくーに生きて行けばいい。