簡単

 交代要員で数日前来日した3人のかの国の女性と昨夜初めて会った。インターネットでかの国の挨拶を調べて練習していったのに、全く通じなかった。10年近く交流があるのに全く覚えることが出来ない難解な言語だ。「ニホンゴ ムツカシイ」は彼女達のお決まりの文句だが、僕はあの国の言葉で「〇〇〇〇語難しい」と言えないから、はるかに彼女達のほうが学習能力がある。  新しいメンバーが来たときに僕が必ずすることがある。それは彼女達が日本で是非してみたいことを聞いて、ぞの実現のために協力できるかどうかを判断することだ。大抵のことは今までしてきたが、たまに実現に至らないこともある。控えめな国民性か、今までの生活が質素だったせいかあまり無理難題を吹きかけられたことは無い。今までにできなかったことは、東京に行きたいと、富士山を見たいの二つだと思う。  今回3人が新たにやってきたが、1人は京都に行きたい、一人は桜を見たい、1人は日本のきれいな景色を写真に撮りたいだった。これなら簡単に全員の要求をかなえてあげられる。桜は勝手に春になれば咲くし、日本の景色はきれいと何人もの人が嘗て言ってくれているから、敢えて何かをする必要も無い。京都は僕には助っ人がいるから結構楽しんでもらえる。  基本的に僕がかかわる分野は「遊び以外」と決めているから、今までしてきたことを繰り返すだけでいい。昨夜、かの国に半年前に帰国した女性とインターネットで話をしたが、「ニホンノ タイコ キタ デモ ワタシイケナイ コチラ キュウリョウヤスイデスカラ タイヘンデス」と残念そうに言っていた。日本で10数回はコンサートに行ったからすっかりファンになってくれたが、それだからこそ余計残念だったろう。  彼女達はこれから3年間、牛窓で実習生として働く。若者が少ないこの町で、作業着に作業ズボン、帽子にマスク姿の彼女達が1列になって自転車をこぐ姿を見るのは僕は好きだ。僕が帰って来た頃はそれこそ日本人の若者が同じ光景を見せてくれていた。豊かで貧しい若者が、貧しくて豊かな若者に取って代わられたこの2,30年の光景だ。