暗躍

 「子どもの頃から親に言われるままに、歯と歯茎を守るためにデンタルフロスを使用する習慣を守ってきた人は多いだろう。しかし、AP通信による新たな調査で、フロスの効果を裏づける十分なエビデンスはないことが示唆された。AP通信は、過去10年間に実施された25件の研究のデータについて検討。対象とした研究の多くは、歯ブラシを単独で使用した場合と、フロスを併用した場合を比較したものであった。いずれの研究も、フロスの使用を支持するエビデンスは弱く、信頼性は極めて低いものであり、質も非常に低く、バイアスが生じている可能性が中程度または高度であるとの結論だった。」

 この報道を見て、良かったと胸をなでおろしたのは僕だけだろうか。以前からデンタルフロスを使うようにと暗黙のプレッシャーみたいなものはあったが、歯と歯の間に歯がある僕には、どうやって使うのか皆目見当がつかなかった。どうやって使うのだろうとずっと疑問に思っていた。歯がきれいに一列に並んでいる人にとっては使えるものなのかもしれないが、2列縦隊の僕には不可能だ。  そんな時に使っても意味がないという結果が出されたのだから、有り難いというか、解き放たれたというか。それにしても如何に権威と言うものが実はいい加減かよく表している。企業や役所の隠し事には常に御用権威が暗躍している。世の中は権威に擦り寄る人間と、忌み嫌う人間と、どちらでもいい人間とに別れるが、一番生き易いのは擦り寄るタイプだろうか。今だそうした経験がないから想像の域を出ないが、おそらくそうした生き方はこれからも僕にとってはありえないだろう。こんな人間でも、安心して暮らせる時代であって欲しい。懐古趣味の人間達が息を吹き返した今を憂う。