宝探し

 1月4万円で暮らし。自分の小遣いとして1万円残し、後はすべて国の家族に送っている。娘から送られてきたお金を親は借金の返済に充てている。借金の理由は、娘の大学の学費だ。ベールに包まれていた彼女達の経済がやっと分かった。  通訳として来日し、見るからに聡明そうな彼女は、その知性ゆえか好奇心が強く、僕と会うときはやたら質問が多い。だから僕も同じのりで、彼女達の経済について尋ねてみた。すると上記のように具体的に教えてくれた。ただ大学を出ているのは彼女だけだから、残りの17人がどうかは知らない。今までの経験で、聞くに堪えられないような話は無かった。むしろ、心温まるものばかりだ。  日本で稼いだお金が借金を払うために使われるが、いくらかは残るはずだ。そしてそのいくらかは、彼女達が国で働いていたら到底貯まる額ではない。そこで、日本で働くことを決心した理由を尋ねてみた。すると彼女は、「夢は 貧しい人のために 食事を食べさせてあげる施設を 作りたい」と言った。かの国にはまだまだ貧しい人が多くいて、その人達のために食事を無料で食べさせてあげる施設が沢山あるらしい。それを友人と作りたいらしいのだ。今まで付き合ってきた多くの人が家族のためと口をそろえたのとは異質な目的に感動した。  その施設を作るのにどのくらいの費用が要り、毎月どのくらいの経費がかかるのと尋ねると、大まかな数字を教えてくれた。すぐに数字が出たから恐らく彼女の夢は本当なのだろう。「私たち 皆 貧乏だから 40歳くらいになったらできる」と言っているから、手助けできるならそれもまたいいかと思った。夢を早くかなえてもらう手伝いなら出来る。僕ら世代になると、仕事以外で何か人様のお役に立てないかと思う人が多いのではないか。出来ることが毎日のようにオセロゲームのように裏返り、出来ないことに変わっていく果てしない喪失感の中で、手探りの宝探しが続く。