標語

 東京電力福島第一原発事故で全町避難が続く福島県双葉町は21日朝、町内2カ所に設置していた原発推進の4種類のPR看板の撤去に取りかかった。その一つが国道6号とJR双葉駅(閉鎖中)をつなぐ道路にまたがるゲート型の広告塔。1987年度の国の「広報・安全等対策交付金」で建てられた。「原子力 明るい未来のエネルギー」の標語の文字板が外されていった。

 どのくらいの歳月、国や東電から経済的な恩恵を受けたのか知らない。どのくらいの金をもらったのか知らない。それで何を作ったのか知らない。そもそも誰が誘致したのか知らない。そして誰が賛成したのか知らない。それらの人が生きているのか知らない。ふるさとを放射能まみれにして、それらの人が今どうしているのか知らない。いい目をした歳月が、これから発病におびえながら暮らす歳月を穴埋めして余るほどかどうか知らない。翻弄された日々を屈辱と捉えるかどうか知らない。あの頃を栄光の日々と回顧するかどうか知らない。本当のことを知らされているのかどうか知らない。犯罪者を許すのかどうか知らない。  でも僕は知っている。大儲けした奴が、今でも大儲けしているのを。土地を奪い、仕事を奪い、命を奪っても決して刑務所に入らないまま大きな顔をして暮らしているのを。