救急

 嘗て薬剤師の講習会で訪ねた事があるが、記憶を呼び起こすことは出来なかった。恐らく30年位前に訪ねただろうから、建て替えられているのかもしれない。なかなか大きな総合病院だ。  夕方施設から母を救急で労災病院に搬送したと連絡があった。高い熱と酸素濃度が70%台と言うことで、施設では対応できないから救急を依頼してくれたらしい。僕も病院に駆けつけるように依頼されたので、カーナビを頼りに駆けつけた。記憶ではずいぶんと遠くにあったように思うが、40分もかからなかったように思う。着くと既に母は色々な検査を受けている途中で、ずいぶんと長い時間待った。  その後、処置室に呼ばれ母の容態の説明を受けた。だいたい想像はしていたが、軽い肺炎と、もともと心臓に水がたまっていると言う所見だった。行く前に息子が心不全が悪化したのではないのと電話で話していたが、やはり心臓に問題ありだった。入院が必要らしくて、色々な書類にサインを求められた。中には急に容態が悪化したときに、救命措置をとらないという誓約書があった。僕は当然それにサインした。お医者さんに「すーっと逝かせてやってください」と言うと、えらい受けていた。  その後、母はストレッチャーに乗せられて6階の個室に入った。6階のエレベーターのドアが開くや否や、6階の看護師さんが3人やってきてストレッチャーを押してきた看護師と引継ぎをした。それからその3人のてきぱきとした動き、患者や家族に対する丁寧な態度に感心させられることしきりだった。  やはりどの職業でも人材は大きな企業に集まるのだろうか。そもそも集まる人がよかったのか、後の教育がよかったのか分からないが、心地よい応対に患者も緊張感が取れるのではないかと想像に難くなかった。モンスター患者が増える御時勢に、ナイチンゲールでい続けることは難しいが、せめて演技でもプロフェッショナルを貫いている姿には頭が下がった。