土鳩

 1枚の葉書が届けられた。全く予想していなかったもので、その施設の良心が伝わってきた。こうした何気ないサプライズに胸を打たれる。  葉書には上下に2枚の写真が印刷され、上段は5月3日に傷ついて飛べなくなった鳩を段ボール箱に入れて持参し、保護をお願いした時の写真で、下段は施設の止まり木で羽ばたいている写真だ。そして手書きで各々に「保護当時」と「放鳥前」と記されていた。そして「2015・5・3に保護したドバトが野生に帰りました。これからも彼らが生きていけるような環境づくりにご協力お願いします」と添えられていた。  近所の人が捨てる現場を娘が偶然目撃して連れ帰った鳩だが、3日くらい一緒に暮らすと情が移るものだ。特別鳥が好きなわけでもないが、飛べないから諦めてか、それとも人間に飼われていたのか、僕を恐れることなく、手のひらに載せた麦などを元気に食べた。だから、インターネットで見つけた岡山県鳥獣保護センターに持っていくとき、正直寂しかった。ただ、センターのドアを開け、中から出てきた若い女性を見た瞬間、この鳩が助けられるという確信を持って、寂しさが希望に変わった。その女性は、人間社会より、動物の社会のほうが居心地がよいのではと思わせる雰囲気を持っていた。必然的にその職業を選んだ人のようにさえ見えた。  実は今朝、いつものように早朝テニスコートを歩いていると、頭上を2度一羽の鳩が飛んだ。そしてテニスコートの支柱に止まると、例のクークルクル、クークルクルと言う山鳩特有の鳴き声を上げ始めた。山鳩をこんなに身近に見ることは出来ないので、驚かさないようになるべく接近して眺めた。山鳩って全く模様がないのだ。下から見ると濃いねずみ色のように見えた。もしそうなら僕にとっては大発見だ。幼い時に預けられた母の里では毎日山鳩の声で起こされていたのに、決して姿を見ることはなかったから。  何か今日の手紙を予感していたような朝の光景だったが、ひょっとしたらあの鳩は・・・