教育

 ひたすら仕事ばかりしていたので、また2人とも中学を出たら寮やアパートに入れて、教育と言うものをほとんどしていないから言う権利はないのだが、少し質素さを教えていればよかったと今になって思う。親を見て育つのなら、親を見せていなかったことになる。僕の子供の頃はまだ、戦後の貧しさが社会に色濃く残っていたから、倹約なんて教えてもらうまでもなく当たり前すぎることだったが、その子の代には倹約は、かなり難しいものになっていたのかもしれない。  よい意味で、一癖あるような人間とも付き合えるようにしておけばよかった。心地よい穏やかな人ばかりでは、なんとなく人間に幅が持てないような気がする。上手く行っている間はいいが、躓いたときなどに、這い上がる気力に欠けるような気がする。強くあって欲しいのではない、気持ちに余裕があって欲しいのだ。  経済的に恵まれていない人達とも親しく付き合える人間にしておけばよかった。その逆の人達とは馬が合わないようにしておけばよかった。自分を測る物差しはいつも、底辺の人達を基準としたものであって欲しい。  親が知らないところで、親が思う以上に大人で人格を築いているのかもしれないが、そして親の前では照れてそれを見せるのには消極的なのかもしれないが、生きることが下手な人達と一緒に不器用に生きていける人であって欲しい。