呪縛

 ニュースを大阪まで見に行きたいと言われて、わざわざそんなところまで行かなくても家にいれば朝から晩まで見えると助言する。NHKから、民放まではしごをすれば、いくらでも見ることが出来る。もっとも、最近は、アホノ何とやらがアホコミを恫喝しているから、ニュース自体も見る気もしないし、民放はふざけすぎて話しにならない。  ニュースと聞いてこのような発想しかできないから、僕もかなり後れをとっている。なんでもアイドルグループの名前らしい。アイドルならもっとまともな空っぽの名前をつけろと言いたくなる。しっかりしているのかと勘違いしてしまうではないか。  さてこの分不相応な名前のグループをわざわざ大阪まで見に行くと言う女性は、数ヶ月前までは、隣の市にある家から僕の薬局に来ることもできなかった。車で20分くらいなものだが、いわゆるパニックで、行動が極端に制限されていた。ところがまじめに漢方薬を飲んでもらったら、ひょっとしたら大阪までいけるのではないかと思い出した。僕はパニックは現場でしか治らないと思っているから、当然大阪行きを勧めた。迷った挙句ホテルで1泊してコンサートを楽しむことになった。行く数日前に薬を取りに来たときにはまだ若干不安みたいだったが、実際はホテルもコンサートも問題なくて、驚いたことに大阪の街歩きも楽しんだらしい。帰ってから漢方薬を取りに来たが、表情は全く変わっていた。やり遂げた自信が表情を柔和にさせたのだと思う。  どうしてこの女性もまた自身に対する評価が低いのだろうと思う。応対していてもっと自由に羽ばたけばいいのにと思う。それが出来ない人ではない。ただ家族の呪縛を正当化して自身で自由を奪っている。だから体や心が悲鳴を上げるのだ。その挙句の症状でしかない。まともな人が陥るトラブルだ。いや、まともすぎるのかもしれない。ニュースでも天気予報でもジャパニーズでもいいから、好きなものを利用して治ればいいのだ。それ以上の治療法はない。あのコンサートの楽しさに(本人談)比べれば、漢方薬の力など微々たる物だ。