丸亀

 「丸亀まで往復8枚お願いします」とだけ言ったのに、駅員は「ボートですか。よく行かれるなら回数券がお得ですよ」と親切に教えてくれた。このあたりの人でなければこの会話がどういった意味を持つのか分からないかもしれないから、丸亀について説明する。  今日、かの国の青年をつれて丸亀を訪ねたのは、丸亀城祭り(丸亀お城村)の出し物でなんと和太鼓合戦が3時間に渡って繰り広げられるからなのだが、このあたりで丸亀と言えばほぼ100%丸亀競艇を連想するだろう。秋に初めて丸亀を訪ねて、城の素晴らしさを知ったのだが、それ以前は僕もまた競艇の街としか認識していなかった。だから駅員が僕を見て、その競艇通いを連想したのも無理はない。自分で身なりがいいとは思っていないが、まさか競艇通いに見られるとは想像していなかった。だから自分自身でも結構受けて、大笑いした。駅員に座布団でも上げたい気分だった。ただ、冷静に見ると、白衣を着ていないときの僕はその程度なんだと言うことがよくわかった。上から下までさすがに身だしなみは無茶苦茶だから、それには頷ける。  学生の時、名古屋の駅でよく「兄ちゃん、いい仕事あるよ」と声をかけられた。仕事が充実してからも車屋さんや住宅展示場で決して声をかけられなかった。そして今、競艇場通いの遊び人に見られる。本当に実際より何かよく見られた経験はない。だから気が楽と言えば気が楽で、それがだんだん高じて、何処まで落ちるのだろうと楽しみだ。