和気清麻呂太鼓

和気清麻呂太鼓目当てで、 赤磐市旧熊山町の常念寺に行ったのだが、思いもかけぬ歓待を受けた。  寺は小さな集落を過ぎてすぐの山の麓にあるのだが、大河ドラマでも有名になったらしく歴史を感じさせる独特の雰囲気だった。古さが重厚さを演出していて、深い山の借景が、いやむしろ寺のほうが深い山のアクセントに見えるくらいの存在感だった。  寺に到着すると、係りの人が出迎えてくれ、名前を記帳した。そしてなにやらお土産物らしいものが入ったビニール袋を渡してくれた。境内では既にマジックが始まっていたが。奥のほうでお餅がつかれていた。出来上がりをトレイに入れて振舞ってくれたのだが、黄な粉と、餡と、これは初めて見たが大根おろしと酢しょうゆで食べる、3パターンで振舞ってくれた。そして、僕と一緒に訪ねた女性達がかの国の人だということが分かると、杵でお餅をつかしてくれ、機械で小さく丸めるのも体験させてくれた。なぜか知らないが警察官(恐らくあのうち溶けようからすると駐在所のおまわりさんだと思う)がお餅の係りで、日に焼けたおばさん達と一緒に彼女達を接待してくれた。おばさん達の物怖じしない態度に、僕が幼い頃預けられた母の里を思い出した。とても気風が似ているように思えたのだ。似ているといえば、進行や裏方を担っている人たちが、ほとんど初老、或いは本老?で、一様に日に焼け、冗談もよく飛ばし不器用ながら懸命に盛り上げていた。この人たちもまた、牛窓の漁師達と似ているように思えた。田舎の人間の、殺気のない風情がとても気持ちいい。同行したかの国の一人の女性が、前日あることで心を傷めていたのだが、帰りがけには心が楽になったといっていた。和気清麻呂太鼓の演奏もあったが、帰りにはクイズなどで楽しませてくれた一連の接待が彼女を救ってくれたのだと思う。ついでだが、そのクイズで彼女はとてもよい賞品が当たった。  さて、初めて聴く機会に恵まれた和気清麻呂太鼓について書かなければならない。恐らく歴史ある和太鼓集団だから名前はしばしば耳にしていた。6人編成で、人口減少のあおりを受けているのだろうと推測できるが、おのおのがしっかりした技術を持っているから、6人と言う小編成の弱点をい感じることが無かった。もう少し人がいれば、そしてこの6人に並ぶくらい上達した人たちが加わればもっと迫力ある演奏も可能だろうが、今のままでも十分と言う印象を受けた。狭い寺の境内に。50人くらいが居ただろうか、そのおかげで僕たちはかぶりつきで聴くことができたのだが、強い日差しを受けての熱演で、汗が顔を滴るところまで見え、しんどそうな息遣いまで感じられ、演奏者に感謝の気持ちまで沸いてきた。1時間くらいに熱演だったが、強くてアップテンポの局が多くて、和太鼓好きにはたまらなかった。ちなみに今日初めて和太鼓を聴いたかの国の女性が、通訳を介して「言葉では言い表せないくらい感動した」と言ってくれた。  演奏が終わってから、子供たちやかの国の女性達に太鼓を開放してくれて、体験させてくれた。彼女達の希望で清麻呂太鼓の全員と記念写真も撮らせてもらった。今日の常念寺での時間を覆っていたのは「親切」これに尽きる。