滅私

 ある議員によると、オープンした初年度から数億円の赤字が出るのではないかと言われているらしい。それでも市長が拘って市民病院を新築するのは何故だろう。昔なら民間病院がなかったから、公で作らなくてはならなかっただろうが、今は民間の同規模のものは、いくつも近隣にある。医師を集めることも出来ずに、非常勤で埋め尽くされているスタッフで、患者を今以上に集めることが出来ると思っているのだろうか。  市民何とかは、所詮市のひも付きだから、多くを望めない。医者の努力と言うより、市長や議員が幅を利かす非効率な組織だ。息子が誘いを受けたときにも、そのことが気になって、勧める気にはならなかった。地元の人たちの役に立てるのはいいが、滅私の対極にいるような人達の口出しには自尊心が傷つくだろう。そんなストレスにさらされることなく、頼ってきてくれる患者さんに没頭したいだろう。息子もそちらのほうを選択してくれたからほっとしている。  合併により周辺部になった牛窓から診療所が消える。議会に上程されたときに誰の質問もなかったというから呆れたものだ。民間が採算性ゆえに手を出さないところにこそ福祉の手を差し伸べるのが普通の発想だが、給料泥棒みたいな人間には通用しない論理だ。思考停止の集団に何かを望むことはもうずいぶん前に止めているが、国から田舎まで、落ちるところまで落ちている感がある。