出世

 メールの中で使われていた単語、職掌が分からなかったが、前後の文脈で、要は関東地方のその方が出世しそうなことだけは分かった。迷っているみたいだが迷う必要はないと返事をした。短い文章で毎回、漢方薬の注文をくれるのだが、気負わず書いてくれた文章が、なんとなくいつもまとまっていると感じるから、そのあたりの才能が買われたのかもしれない。  そうしているうちに、これは県内の女性だが、今までは派遣?で働いていた県のある機関に、正式な職員として勤務できるようになったという報告兼漢方薬の注文だった。職場の名前を聞いて驚いたが、40歳を前にして良く就職できたなあと思った。本人も言っているように「勉強した」らしい。採用試験に合格したみたいだ。昨日まで職員に頭が上がらなかったのが対等になる。こんなに嬉しいことはない。必ずしも人間関係が得意でないその女性が、堂々と存在できる場所を自分の手でつかんだのだから。「先生のおかげです」と言われたが、僕が出来ることなどしれていて、ストレスに負けない胃と腸を作っただけだ。本人の努力が99.9%を占める。  ただ、症状にあわせて漢方薬を作ろうと、日々そのことばかりを繰り返してきたが、体調以外にも役にたっているんだと教えてもらった気がする。僕が作る過敏性腸症候群漢方薬を飲んでいる人のほとんどが、人を押しのけてと言うタイプではない。むしろその逆で後に引くように暮らしている人が多い。そうした人たちが自分の力で新たな境地を引き寄せたのだから、余計嬉しい。「自信なさげ」こそが魅力の人たちに、自分の魅力に気がついてほしい。