特権

 明らかに覗かれている。いや筒抜けと言った方がいいのだろうか。  インターネットをしていると、薬剤師の求人がスポットでしばしば出てくる。念の入ったことに、その求人のほとんどが岡山県と来ている。どうして長崎県岩手県が出てこないのか不思議だ。大都会のも時々出てくるから、「地元でも都会でもいいから薬剤師として働きたい岡山県在住の薬剤師」と僕のおよそをつかんでいるのだろうか。僕はカードなるものを持ったことがないから情報と言うのは余り漏れないと思うのだけれど、僕が考えるに、もし僕が検索しているものを機械が統計処理できるなら、僕がどんな人間かは容易につかめるだろう。  そんなことに思いがいたったのはユーチューブの経験による。ユーチューブでしばしば見るのは小出先生や広瀬隆などだが、なぜかユーチューブを開くと、それらの映像がいくつも用意されている。まるで僕がそれらをこれから見るのが分かっているかのように。そしてその経験から分かったのだ、僕らは覗かれていると。  最近スポットで入ってくるものが変化した。これまたなぜか岡山県ばっかりなのだが、アルバイトの情報が多い。それも清掃関係のものが多い。ホテルや店舗の清掃のアルバイトで時間給が720円から高いところで1000円だ。イオンが岡山駅の傍にできてから求人がすこぶる多いが、店舗スタッフがほとんどだから、清掃関係はなかなか見つからない。しかし親切にもインターネットにその情報が乱入してきてくれる。実はこのところ僕は、かの国の二人の青年のためにアルバイト探しに余念がないのだ。働ける時間帯と内容を吟味しなければならないから、結構労力を割いている。それを既に機械がつかんだのだろう、画面にしばしば現れる。情けないが僕はそれをクリックして開いてしまう。わらをも状態なのだ。  それにしても便利で気持ち悪い時代だ。所詮僕など主義主張のないノンポリだが、主義主張を持っている人は気をつけなければならない。一庶民が一庶民を監視する。そして庶民も特権を与えれば権力と化す。