屈辱

 「今、給料前でお金がないから支払いは後からでいいですか?」と言われて僕は「いいよ、いつでも都合がいいときに」と即座に答えたが、本当は「いらないよ」と答えたかったのだ。ただそれをすると、次回から薬局に来にくくなるからしないほうがいい。お役に立てる機会は他の薬局に比べて圧倒的に多いと思うから、これから先も敷居が低いままがいい。  庶民などと言うものを経験したことがない政治屋が多くを占めてきたから、下々のことはほとんど理解できないのではないか。底辺生活者の底上げをもっぱら政治はやればいいと思うのだが、むしろ今は逆で、高所得者の生活をまだ底上げしている。彼らは天井知らずのバブルを夜な夜な楽しんでいるのではないか。原材料を必要としないような仕事をしている人間が、多くの富を手に入れている。たった1000円の薬代を待ってもらう善良な人間が今までも、これからも報われる可能性は低い。黙々と、不満を訴える術もなく生活し老いて行くのだ。  総選挙があるのかどうか分からないが、せめて、いい目が出来る仕組みを虎視眈々と構築しているやつらの一人でも退場させたいものだ。浮かばれぬ人たちが、浮きっぱなしの人間達を支える屈辱に気がついて欲しい。