反転攻勢

 鬱についてのある報告を読んでいて、鬱症状の改善の指標に「疲労感」がなりうると報告されていた。疲労感が取れれば鬱が改善されつつあると言うことなのだろうが、その中で妙に引っかかる部分があった。その疲労感と関連して4つの項目が列挙されていたのだが、その4つがまるで重要な要素であるかのような印象だった。「女性」「失業中」「教育を受けた期間が短い」「月収が低い」の4つなのだが「女性」が繊細だから上げられているのは分かるが、その後の3つについては、鬱どころか、人生そのものの質をおとしめる要素だ。  人間としての充電時間が短くして社会に出、安い賃金でこき使われ、その挙句失業でもしたら欝にでもならないとやっておれないだろう。これらの要素を併せ持っている人は現代では多いと思う。実際僕のところに接触してきてくれる人の中にも、該当する人は多い。体調不良、心調不良を理由に仕事をやめるとよく言う人もいるが、経験上、失業状態のほうが心を病む人が多いのも経験している。これらの3要素は、本人のせいではない部分も多い。望まなくてその状態になってしまった人も多い。いわば時代の被害者と呼ぶべき人も多い。家庭環境に恵まれ、経済的に恵まれ、最高の教育を受けたようなやつらが牛耳るこの国で、そうでない人たちの悲鳴を受け止めてくれるところはない。孤立して、屈辱のうちに、計り知れない不安と同居して毎日を消化している人は多い。青春真っ只中で、すでに人生の消化試合に臨んでいるようなものだ。理不尽を友に、足跡さえ残らない空疎な人生を耐え忍んでいるのだ。彼ら、彼女らは、この先反転攻勢に出る仲間も手段も持ち合わせず、あのままで終わってしまうのだろうか。