恋愛

 ニュースを見ていると現代の恋愛は命がけだ。命を捨てる覚悟がないと人を好きになることも出来ないみたいだ。恋愛は、リンクのない場所での格闘技だ。 殺されるなら一人でいた方が余程ましだと思うのだが、それでも恋愛がしたいのだろうか。恋愛の向こうに幸せな結婚、家庭生活が待ち受けていると思うのだろうか。いやそれ以前に恋愛自体が、幸せに満ちていると思うのだろうか。僕が結婚する人に決して祝辞を述べないのは、本来なら、いや、従来ならおめでたい儀式がとんでもない不幸を抱え込むことになる、人生を一転させるような不幸を背負うことになる確率が高いことを知っているからだ。薬局、それも漢方薬を多く扱う薬局をやっていると、苦痛を抱えた人が来る可能性が高い。そうした人は色々と話してくれるが、まるで十字架を背負って生きているような人もいる。そして恋愛さえしていなければ、結婚さえしていなければどれだけ幸せに生きて来れただろうと思う人が多い。一気に転落する切っ掛けが恋愛であったり結婚であったりする。  逆に一人で暮らしている人は、落ち着いているし、結構心も安定している人が多い。煩わしさから解放されているからか、自分の価値観をおかされないからか、何となく精神的に追いつめられている人は少ないような気がする。何よりも自由というものを多く持っているから、一番失いたくないものを失わなくてすむ。これに優る自由はないのだろう。  昔なら、命をかけて守るとパートナーにプロポーズするのだろうが、今は違う。心変わりしたら、「お命頂戴します」では恐ろしくて恋愛なんてやっていられない。「命がけ」は今は比喩ではなく現実だ。